フォーク 邦楽

竹原ピストルに学ぶ作詞術

 

シンガーソングライターとして独自の世界を切り開く竹原ピストル、彼はミュージシャンである前に作詞家であり、稀代の詩人である。人の繊細な心情を大胆な言葉で綴り、膨大な熱量で放つ表現力に、ギダー一本で勝負し続けてきた男の人生を感じる事ができる。

今回はそんな竹原ピストルの詩を中心に、適当男の僕が作詞という視点から竹原ピストルの魅力にせまりたいと思う。

うたうたい竹原ピストル

僕はミュージシャンやアーティストと呼ぶより「うたうたい」と竹原ピストルをそう呼んだ方がしっくりくる。日本全国ツツウラウラ自らの足で歌い歩きミュージシャンとしての活路を見出していったその姿はまさに「うたうたい」そのもの。うたうたいを地でいく竹原ピストルという男をまずは探ってみよう。

野狐禅

現在の竹原ピストルとしての活動以前に、竹原ピストルはハマノヒロチカとともに「野狐禅」というフォークバンドを組んでいた。1999年に結成され2009に解散しているが、この間に5枚のアルバムをリリースし、映画(青春☆金属バット)に竹原ピストルが主演するなど今の竹原の俳優としての側面も出来上がっている。野狐禅が歌う『生きる』というメッセージは今の竹原ピストルにも一貫してある一つの重要なテーマであり野狐禅が竹原の重要なルーツであった。リンクを貼っておくので是非聞いてほしい。

竹原ピストル ”よー、そこの若いの”

 

 

よーそこの若いの、そこの若いの

俺の言う事を聞いてくれ

「俺を含め、誰の言うことも聞くなよ。」

「聞いてくれ」と人をを集めといて、「聞くな」と突き放す。こういうプラスとマイナス的な言い回しが本当にうまい方だなと。

そしてどこか上から目線であつくるしく説教くさい事が理由で嫌いな人はとことん苦手だと思う。それもこれも熱量にある。聞き流す事ができないほど詩にメッセージ性があり、ギターと声で効率的に伝えるその熱量は合わない人には相当しんどいだろう。逆に伝わりすぎてそこそこ人生に満足している人をも「もっと頑張らねば」と焦らせる程の歌が出来上がる。

少し話は逸れたが、要はプラス的な言い回しと、マイナス的な言い回しだ。ここを押さえておけば大体の事は解決できる。人に深いと思わせる事ができる。

「砂漠にいるペンギン」とか「雪が降る沖縄」とか大体こんな事をメロディに乗せれば、なんかよくわからないけど浅い人間に「深い」と思わせる事がきっとできるだろう。

アルバム ”peace out"に収録されている「一等賞」という曲がある

竹原ピストル ”一等賞”からの一節

並ぶために並んでるわけじゃない

並びをぶっちぎるためにまず並んでいるのさ

ルールにのっとって

ルールをのっとって一頭賞

竹原ピストルが書く詩の面白さは、そのまま日本語の面白さにもつながる。その事がよくわかる一曲だ。

一見似たような文ではあるが、

並ぶため[に]と、並び[を]でその後に続く意味合いを大きく変えている。

ルール[に]と、ルール[を]、これも[に]と[を]がスイッチになって、その後の文脈に反転や肯定といった効果をあたえている。

竹原ピストルは日本語の「てにをは」、いわゆる助詞を使うのが非常に上手。音楽的にもラップで言う韻を踏んだような状態になって、メロディに対する歌詞の言葉乗りが良くなる。

こういう言葉遊びのような所にも注目すると竹原ピストルの詩の世界をもっと楽しめるかもしれない。

紅白歌合戦に出演し、武道館公演も達成して、今年もロックインジャパン等ロックフェスに出演する竹原ピストルだが、いまだに地方の小さな小屋でもライヴを行っているそんな所が僕は好きなのだ。

どうにもやる気が起きないとか、説教に飢えているなんて人は聞いてみるといいかもしれない。

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