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羊文学はいま、どこへ向かっているのか——数年前に“きらめき”を聴いた僕たちへ

「きらめき」。

この曲に出会ったのは、今より少しだけ世界が静かだった頃。
無数のプレイリストを何気なく流していたイヤホンの中から、不意に流れてきたあのイントロ。
透明で、やさしくて、それでいて確かに強い音に心を奪われた。

羊文学というバンドの存在を知らなくても、「この声、このギターの音は忘れられない」と感じた人は少なくないはずだ。

あれから時は流れた。
羊文学はメジャーデビューを果たし、タイアップを多くこなし、音楽性も大きく広がってきた。

でもあの“きらめき”は、今も確かに、羊文学の中に生きている。

原点にある“きらめき”

2018年にリリースされた「きらめき」は、羊文学にとっても、リスナーにとっても象徴的な一曲だ。

疾走感と切なさのバランス、焦燥感をにじませながらもまっすぐに進む歌詞、
そして塩塚モエカの揺れるようなボーカルは、多くのリスナーの心を掴んだ。

この曲は、感情に言葉が追いつかない瞬間を、音にしてくれている。

現在地と、広がる音楽性

メジャーシーンに進出した彼らは、2022年のアルバム『our hope』で新たな一面を見せた。

「きらめき」のような内向きの感情だけでなく、“世界に向けた希望”を表現する音楽が増えてきた印象だ。

特にアニメ『平家物語』の主題歌「光るとき」や、『呪術廻戦』エンディングの「more than words」では、ストーリーに寄り添う静かな表現力が高く評価された。

音の密度は増しても、根っこにある“自分の感情を言葉にすること”は一貫している。

羊文学は、音を“飾る”のではなく、“差し出す”。
だから、聴く側も心のどこかが動いてしまうのだ。

変わる自分と、変わらない音

“きらめき”に出会ったあの頃の自分と、今の自分はきっと違う。
だけど、あの音をもう一度聴けば、当時の景色や感情が鮮やかに蘇る。

音楽はいつも、時間を巻き戻すタイムマシンのような存在だ。

羊文学の音は、その中でも特別に、記憶と感情の奥底に触れてくれる。

きらめきの中にあった痛みも、優しさも、不安も。
それらは今の自分にもまだ必要なもので、だからこそ彼らの音楽は“更新され続ける記憶”になっていく。

CDやレコードでも楽しみたい人へ

ストリーミングもいいけれど、じっくり聴きたい方にはCDやアナログ盤もおすすめです。

▶ 『our hope』(CD)

▶ 『光るとき』(アナログ盤)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0B4RHY52Z?tag=chameleonmusi-22

まとめ

羊文学はいま、静かに、そして確かに進み続けている。
“きらめき”の頃の青さを失わずに、世界の輪郭を少しずつ広げながら。

何気ない日常の中で、ふと心に引っかかる瞬間があったら、また彼らの音に耳を澄ませてみてほしい。

変わらないのに、どこか違う。
それが、時間を重ねた音楽の強さだ。

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