一つ一つ丁寧に作り込まれた楽曲に高い演奏技術と、(Vo/P)藤原聡の歯切れのいいハイトーンボイスが磨き上げられた楽曲に相乗効果を生み出して、そのポップさを最大限に引きだす。今回は2019年を代表するバンドの一つになるであろうOfficial髭男dismの話。
Official髭男dismとは?
藤原聡(ボーカル/ピアノ)、小笹大輔(ギター)、楢崎誠(ベース)、松浦匡希(ドラム)
この4人で構成する2012年に結成された島根県出身のバンドだ。主な作詞作曲は藤原聡(ボーカル/ピアノ)が担当しているようだが、細かなアレンジは深い所までメンバー全員で取り組んでいるように思う。
本当に楽曲の一つ一つが作り込まれていて飽きのこない仕掛けが沢山散りばめられているし、鮮度を保ったまま何度でも聞いていられる。
セカオワやゲスの極み乙女のファン層も取り込んで、量産されるそんじょそこらのJ-POPとは完全に一線を画する次代のポップスターである事は間違いない!ここは言い切らせてもらいます。
ヒゲダンことOfficial髭男dismは、「オフィシャル ヒゲ ダンディズム」と読む。こんなこと既にご存知の方は多いとは思いますが、このバンド名も秀逸。
バンド名の由来自体は、”髭の似合う歳になっても、誰もがワクワクするような音楽をこのメンバーで続けて行きたい” ということらしいが、サブスクが主流になりつつある今誰もが世界中の音楽を聴く事ができるし、自分で新しい音楽やアーティストを探そうとしなくても手の平の上で勝手にAIが自分の好みの曲を見繕ってくれる。(ほんとテクノロジーに感謝だね!)
それを僕たちはスクロールして新しい音楽との出会いが生まれたりする。そんな時代にOfficial髭男dismはバンド名がフックになって人との間に興味という”引っかかり”を生んでくれる。「聞いてみようかな」というきっかけを作ってくれる。僕自身Official髭男dismというバンド名をみて「なんだこれは」と一発でバンド名は覚えました。
Official髭男dism "ノーダウト"
ドラマの主題歌に起用されたこの曲、イントロから始まるピアノのリフレインにはリードシンセが重ねられていて楽曲全体にEDM的なアプローチを垣間見る事ができる。
ブラックミュージックやファンクを楽曲に落とし込んどいて、ポップ・ミュージックである事、一度聞けば心を掴んでしまうキャッチーなメロディである事を見事に共存させてしまっている。
イントロやサビ終わりで入ってくる「イイェエイ オォーオ」というライヴ感を出すアレンジも全くわざとらしくないというか、わりとこういう事を音源に落とし込んでしまうと妙に冷めてしまったりするアーティストもいるんですが見事にマッチしていますよね。
Official髭男dism "Pretender"
ノーダウトの一発で終わるかと思いきや、しっかりと自らを更新してくるような曲を作ってきた。というより作り込んできた。
冒頭から”Pretender”という楽曲の方向性やメッセージを代弁するようなギターのリフから始まり、イントロだけでこの曲への期待感が駆り立てられる。もはやリフに職人技のようなものさえ感じますよ。
Aメロ→Bメロ→サビの構成ごとに雰囲気や表情を変えて、パートごとに聴感に刺激を与えてくれる。ほんと中国の古典劇 変面のようだよ。そして藤原聡(ボーカル/ピアノ)の伸びやかな声がロマンスをくれるよ。
なによりメロディに乗せる言葉選びのセンス。メロディの良さを殺さないで、この言葉以外ありえないと言うような言葉で歌詞という文章を成立させていますよね。
以下、サビの一節
君の運命のヒトは僕じゃない 辛いけど否めない でも離れ難いのさ
その髪に触れただけで 痛いや いやでも
甘いな いやいや グッバイ
それじゃ僕にとって君は何? 答えは分からない 分かりたくもないのさ
たったひとつ確かなことがあるとするのならば 「君は綺麗だ」
サビの伸びやかな美しいメロデイの中に ”痛いや いやでも 甘いな いやいや” と感情の葛藤をうまく表現していますよね。メロディの良さを歌詞で一切犠牲にしていないと思います。
そして楽曲の最後にも歌われている締めの歌詞「君は綺麗だ」。
これはもう体操で言えば着地まで完璧に決まった満点でしょ。
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RADWIMPSの”前前前世”や星野源の”恋”のようなその年代表するような曲は必ず毎年生まれる。
そしてそんな曲は表舞台にたって王道を行かなければ生まれないと思っています。あらゆる面で柔軟な音楽性をもったofficial髭男dismは近い将来そんな曲を書いてくれるんじゃないかと個人的にはそう思っています。
ワンマンツアー中の彼らだが今年も様々なフェスへの参加も決まっている。生で見るライブと作り込まれた音源の違いなんかもofficial髭男dismの楽しみ方だと思う。ぜひ機会のある方は生で体感してみてほしい。