「About You」は知っている。でも、アルバムを開くと英語の長いタイトルが並んで、どこから聴けばいいか迷う。そんな人に向けて、The 1975『Being Funny In A Foreign Language(外国語での言葉遊び)』の入口を整理しました。
今回は、公式の作品情報とメンバーの発言を手がかりにした、聴く前の解説です。音源を実際に再生して採点したレビューではありません。曲の聴く順番や比較ポイントは、このブログからの提案として読んでください。
先に結論を言うと、まず「Happiness」「Part Of The Band」「About You」の3曲を選び、気になったら1曲目から曲順どおりに戻るのがおすすめです。好きな曲を増やすことと、アルバム全体を理解することを、いっぺんに済ませなくても大丈夫です。
2022年の5作目。まず「どの版か」を確認
本作のオリジナル発売日は2022年10月14日。The 1975の5枚目のスタジオ・アルバムです。輸入盤CDの本編は11曲で、日本盤には「All I Need To Hear」のデモがボーナス・トラックとして追加されています。2023年の来日記念盤を見つけても、アルバム自体が2023年の新作という意味ではありません。Universal Music Japan:輸入盤、来日記念盤
初めて聴くときは、まず本編の最後「When We Are Together」までを一つの区切りにすると、版の違いで迷わずに済みます。デモは、そのあとで制作過程を考えるための別枠として聴く。この小さな区別だけでも、最後の曲がどれなのかを意識しやすくなります。
制作面ではジャック・アントノフの参加もポイント。日本の公式紹介は、本作で初めて外部プロデューサーとして迎えたことを伝えています。とはいえ、参加者の名前だけで音の印象を決める必要はありません。制作情報は「何を期待するべきか」の正解ではなく、聴き終えたあとに戻れる補助線として使うと便利です。Universal Music Japan:制作情報
入口①「Happiness」では、掛け合いを探す
マシュー・ヒーリーはApple Musicの曲別解説で、この曲について、同じ部屋でジャムをしたこと、反復やコール・アンド・レスポンスがあることを説明しています。Apple Music:本人による曲別解説
ここから提案したいのは、最初の一回で全パートを聴き取ろうとせず、「何かが鳴ったあと、別の音がどう返すか」に耳を向ける方法です。歌を主役として追う一回と、歌の間に入る音を追う一回に分けてみる。どちらで楽しかったかを比べるだけで、自分がこのバンドの何に惹かれるのかが見えやすくなります。
専門用語を覚える必要はありません。「この返事みたいな音が好き」「同じ部分に戻ってくるのがうれしい」という感想で十分。アルバムを好きになる入口は、立派な評価文より、その小さな反応のほうが頼りになります。
入口②「Part Of The Band」は、分からなさを残していい
公式の日本語紹介では、バンドの一員として生きてきたヒーリーの苦楽や自問自答に触れた曲として説明されています。題名だけを見て、バンドの楽しさをストレートに歌う曲だと決めつけないほうが面白そうです。Universal Music Japan:2022年7月8日の紹介
ここでの聴き方は、歌詞を全部理解してから再生するのではなく、先に声の運び方へ注意を向けること。言葉が詰まって聞こえる場所、間を置く場所、同じ調子に聞こえない場所を、自分なりに一つだけ覚えておきます。そのあと、正規の歌詞表示や日本盤の対訳が利用できるなら、気になった箇所を確かめてみてください。
これは「英語が分からなくても本当の意味は分かる」という話ではありません。音の印象と、言葉から受け取る意味を、別々に楽しむための順番です。二つの印象がずれたら、そのずれも発見になります。なお、この記事では歌詞全文や対訳の転載はしません。
入口③「About You」は、単曲のあとに終盤へ戻る
「About You」は本編の10曲目。その次に「When We Are Together」が置かれています。曲順は公式トラックリストで確認できます。Universal Music Japan:曲目
好きな曲をリピートするのは楽しいけれど、今回は一度だけ、9曲目「Human Too」から最後まで続けてみてください。単曲で聴いたときと、前後の曲を含めたときで、終わり方の印象が変わるかを確かめるためです。
曲順に唯一の正解となる解釈を当てはめる必要はありません。「About You」で止めたいのか、その次まで聴きたいのか。その答えが日によって変わってもいい。アルバムという形式の面白さは、好きな曲そのものに加えて、その前後も選んで楽しめるところにあります。
もう一歩:日本盤のデモは何と比べる?
ボーナス曲にアクセスできる人は、「All I Need To Hear」の本編版とデモ版を続けて聴く方法もあります。ただし、デモだから未完成、本編だから必ず優れている、と最初から結論を出さないのがポイントです。
比較するときのメモは三つだけで十分。声に注意が向くのはどちらか。曲の始まりをどう感じるか。終わったあと、もう一度聴きたくなるのはどちらか。具体的な録音条件を知らなくても、この比較なら自分の反応を基準にできます。機材や音質の優劣を断定する必要もありません。
こんな人に向いている入口
このガイドを使いやすいのは、1曲は好きだけれどアルバムへ進めていない人、曲順による印象の違いを試したい人、歌詞の理解を急がず洋楽を楽しみたい人です。
逆に、いま欲しいのが「絶対に自分の好みに合う一曲」なら、全曲を無理に通す必要はありません。まず3曲を試して、気になった曲だけ残してください。初回でピンとこないことを、理解不足のせいにしなくて大丈夫です。
聴き始めるなら、The 1975公式サイトの配信リンクへ。Apple Music、Spotify、YouTubeなど、公式に案内されているサービスから選べます。最初の一回は「名盤かどうか」より、「どの曲の続きを聴きたいか」を探してみてください。
※公式情報の確認日:2026年11月2日。発売当時の記事中のライブ予定・販売特典を、現在の予定や在庫として案内するものではありません。
バンドの初期作品を知りたい方は、2019年に書いた紹介記事「頼むから一度THE 1975を聞いてみてくれ」もどうぞ。当時の作品や活動を振り返る記事です。