Arctic Monkeysの曲は好き。でも『The Car』はまだアルバム単位で聴いていない。そんなとき、「前の作品と比べてどうなのか」という評価を先に読むほど、かえって再生ボタンが遠くなることがあります。
今回は、2022年の『The Car』について、公式の制作情報と公開映像の来歴を整理しながら、最初に試したい3曲を案内します。音源を実際に再生して採点したレビューではなく、聴く前のガイドです。聴く順番や比較の視点は、このブログからの提案になります。
おすすめの入口は「There’d Better Be A Mirrorball」「Body Paint」「I Ain’t Quite Where I Think I Am」。この3曲には、レーベルが案内する公式映像があります。ただ曲を順番に再生するだけでなく、音源と映像を分けて楽しめるのが、今回この入口を選ぶ理由です。
まず基本情報。『The Car』はどんな位置の作品?
『The Car』は2022年10月21日発売の7枚目のスタジオ・アルバム。全10曲はアレックス・ターナーが書き、ジェームス・フォードがプロデュースを担当。録音場所として、サフォークのButley Priory、ロンドンのRAK Studios、パリのLa Fretteが公式に記載されています。Domino:発売日の告知、2022年10月21日
制作場所を知ったからといって、その土地の空気がそのまま音に聞こえると断定することはできません。ただ、ひとつの場所で完成した作品だと思い込まず、どんな制作の積み重ねがあったのかを考えるきっかけにはなります。
『AM』など以前の作品から入った人は、最初から「自分が好きだった要素はあるか」だけを採点しない聴き方も試してみてください。代わりに、今回いちばん耳が向いたものを一つ記録する。歌なのか、リズムなのか、曲の展開なのか。比較する基準を少し増やすと、好みの違いを言葉にしやすくなります。
入口①「There’d Better Be A Mirrorball」:最初の一曲を、入口として聴く
この曲は、アルバムから最初に公開された楽曲です。Dominoの2022年8月30日付告知では、ミュージックビデオをアレックス・ターナー自身が監督したことも確認できます。アルバムの曲順でも1曲目に置かれています。Domino:楽曲・映像の公式紹介
初めて聴くなら、まず映像を見ずに一度。そのあとで公式ビデオを見る、という順番を提案します。映像を見る前に想像した場面と、実際に見た画面がどれくらい一致するかを確かめるためです。
同じ曲でも、画面を見ていると声より人の動きが気になるかもしれません。音だけなら印象に残らなかった瞬間が、映像では大切に思えるかもしれません。その違いを、曲の評価のぶれだと考えなくて大丈夫です。音と映像は、注意の向く先を変えてくれます。
なお、本人が映像を監督したことと、映像のすべてが歌詞の正解を示すことは別です。物語を一つに解読するより、「どこに注意を向けたくなるか」を入口にしてみてください。
入口②「Body Paint」:同じ曲を、前半と後半に分けてみる
「Body Paint」の公式告知は2022年9月29日。ビデオはブルック・リンダーが監督し、ロンドンとミズーリで撮影されたと紹介されています。1曲目の映像とは監督が異なるため、誰が視覚表現を担当したのかという面でも比較できます。Domino:Body Paint公式紹介
ここで試したいのは、音の細かな名称を調べる前に、再生の前半と後半で自分の注意がどこへ動いたかをメモする方法です。「最初は歌を追っていた」「途中から伴奏を待つようになった」など、変化があったかどうかだけで十分です。
もし特定の場面に戻りたくなったら、そこだけをもう一度。最初から最後まで同じ集中力で聴こうとするより、自分が引っかかった位置から曲全体へ戻るほうが楽なこともあります。
映像との比較では、曲が変わったように感じる瞬間と、画面の切り替わりが一致するかに注目してみてください。画面を閉じて同じ箇所を聴き直すと、映像によって強く印象づけられたのか、音だけでも気になったのかを比べられます。
入口③「I Ain’t Quite Where I Think I Am」:スタジオ作品とステージを分ける
この曲の公式映像は、ブルックリンのKing’s Theatre公演で撮影されたもの。監督はベン・チャペルとザッカリー・マイケルで、Dominoが2022年10月19日に公開を告知しています。Domino:撮影場所と監督の説明
おすすめは、アルバム収録音源を聴いてから、この公式映像を見ることです。ステージ上で誰の動きに目が向くか、演奏者同士の関係をどう感じるか。音源だけのときには持たなかった関心を探してみます。
ただし、公演で撮られた映像だからといって、編集や音声処理が一切ない記録だとは限りません。会場で実際に聴いた体験とも別です。「生演奏のほうが本物」と順位をつけるより、スタジオ音源と公式ライブ映像で、何に注目したくなるかを比べるのがよさそうです。
配信サービス側の音量差にも注意してください。片方が大きく聞こえるだけで、勢いの評価が変わることがあります。機材の優劣を決める比較ではないので、聴きやすい音量に合わせれば十分です。
3曲が気になったら、10曲の順番へ戻る
入口を試したあとは、アルバムを1曲目から聴いてみてください。今回紹介した3曲は、公式曲順では1曲目、5曲目、2曲目にあたります。先ほどの試聴順と、本来の配置の違いを体験できるわけです。
特に5曲目「Body Paint」の次には、表題曲「The Car」が続き、最後は「Perfect Sense」で閉じます。曲名や曲順はレーベルの告知で確認できます。Domino:公式トラックリスト
聴き終えたら、最も好きだった曲を一つ、もう一度確かめたい曲を一つ選んでみてください。二つが同じでも構いません。すぐに好きになった曲と、気になるけれどまだ判断できない曲を分けておくと、次に聴く理由ができます。
合わなかった場合も、比較はそこで終えていい
この入口は、バンドの変化に興味がある人や、音源と公式映像を行き来したい人に向けたものです。以前好きだった曲の延長を今すぐ求めているなら、期待と合わない可能性もあります。その場合、無理に「成長を理解しなければ」と考える必要はありません。
作品に納得することと、自分のプレイリストへ入れたくなることは別の判断です。背景を知っても好みが変わらない。それでも、何を求めていたかが少し明確になれば、聴き比べた意味はあります。
再生先は、Dominoの公式発売告知にまとめられた各曲の動画リンクから選べます。まずは1曲、気になった入口から。『The Car』を自分の好きなArctic Monkeysに加えるかどうかは、そのあとで決めてみてください。
※公式情報の確認日:2026年11月2日。本記事は2022年作品の入門ガイドです。出典に載っている当時の公演日程を、現在のツアー予定として案内していません。