ボーカルの小さいところに音量を合わせると、大きいところが飛び出す。大きいところに合わせると、語尾が聞こえない。こんな音量差を整えたいときに使うのがコンプレッサーです。
ただ、挿すだけで聞きやすくなるわけではありません。強くかけすぎれば、言葉の勢いや演奏の表情も変わります。この記事ではMac用Logic Proの標準Compressorを使い、「どれくらい音量を抑えているか」を確認するところから始めます。Logic Proは有料ですが、所有者に追加のプラグイン購入は必要ありません。
コンプレッサーは何をするもの?
ここで扱うコンプレッサーは、設定した基準を超える信号を抑えるエフェクトです。音量差を小さくしたあとで全体のレベルを補えば、小さかった部分との距離を縮められます。圧縮そのものと、あとから音量を上げる操作は分けて考えましょう。Apple公式:Compressorの概要
録音が一か所だけ極端に大きいなら、その部分の音量を個別に直す方法もあります。最初から全体へ強い圧縮をかける前に、「全体的なばらつき」なのか「数か所の飛び出し」なのかを確認すると、処理を絞りやすくなります。
まず四つのつまみを理解する
- Threshold(スレッショルド):圧縮の基準となるレベル。下げると、より多くの部分が基準を超えます。
- Ratio(レシオ):基準を超えた分を抑える比率。値が高いほど強い圧縮になります。
- Attack(アタック):信号が基準を超えてから圧縮が働くまでの時間を調整します。
- Release(リリース):信号が基準を下回ってから、圧縮を解除していく時間を調整します。
画面のGain Reductionは、音量をどれくらい減らしているかの表示です。出力音量のメーターとは区別しましょう。Apple公式:Compressorのメインパラメータ
Ratioが4:1なら、単純化した静的な説明では、基準を超えた4 dBの増加が出力では1 dBの増加になります。音全体を四分の一にする意味ではありません。実際の動きはAttackやReleaseなどにも左右されます。Apple公式:Compressorを使う
練習前に、比較条件をそろえる
トラックのAudio FXから「Dynamics」→「Compressor」を追加します。今回はモデルの違いを比べず、Platinum Digitalに固定して進めます。
Auto GainはOffにし、Make UpとOutput Gainは0 dBから始めます。Input Gainも途中で変えないようにします。自動補正で大きくなった印象と、圧縮の効果を混同しないためです。
Output側のMixは100%にし、Limiterはオフ、Distortionもオフから始めます。Mixは原音と処理音の混ぜ具合、LimiterとDistortionは圧縮とは別の変化を加える要素です。今回は要因を減らして聴きます。Apple公式:Compressorの出力パラメータ
練習例:大きい言葉を少しだけ抑える
以下は操作を理解するための未試聴の設定例です。特定の声で検証した推奨値ではありません。声、録音レベル、曲の速さに応じて変えたり、処理をやめたりしてください。
1.大きい部分と小さい部分を含む区間を選ぶ
同じフレーズを繰り返します。大きい一音だけで決めず、その直後の小さい言葉まで確認できる区間にしましょう。プロジェクトは先に保存しておきます。
2.穏やかな比率から始める
例としてRatioは2:1、Attackは20 ms、Releaseは100 msにします。時間の違いを聴きたいのでAuto Releaseはオフにしておきます。Kneeなど、ほかの設定は途中で動かさず、一度に変える項目を絞ります。
3.Thresholdを下げて動作を確認する
圧縮がほぼ起きない高い位置から少しずつ下げます。大きい言葉でGain Reductionが1〜3 dBほど動く状態を、今回の練習上の目安にします。常時この量に保つ必要も、数字へ無理に合わせる必要もありません。
Thresholdを一律に「−20 dB」と決めないのは、入力レベルが違えば効き方も変わるためです。小さい部分までずっと抑えられているなら、まずThresholdを戻して比べます。
4.音量をそろえて、言葉の出方を聴く
圧縮後は小さく聞こえることがあります。必要な分だけMake Upを上げ、バイパス時と全体の大きさを近づけて比較します。出力のクリップ表示も確認し、上げすぎないようにします。
「飛び出す言葉が落ち着いたか」と同時に、「言葉の頭が弱くなっていないか」を聴きます。頭の勢いが減りすぎるなら、Attackを少し長くして比較するのが一つの試し方です。ただし、長くすれば常に良くなるわけではありません。
Releaseは、次の言葉まで含めて判断する
Releaseを変えるときは、圧縮された瞬間だけでなく、その後の戻り方へ注意を向けます。次の小さい言葉まで抑えられる感じがあれば、少し短くして比較。音量が不自然に揺れるようなら、逆に長くする、圧縮量を減らす、など一つずつ試します。
メーターが毎回同じ形で動くことを目標にはしません。声の抑揚が違えば動きも変わります。最終的には伴奏を戻し、言葉が追いやすくなったか、曲の勢いを失っていないかで決めます。
よくある失敗と戻し方
オンにすると良く聞こえるが、音量も大きい。 まず出力を合わせて再比較します。
息や背景音が目立つ。 圧縮後の音量補正で目立っていないか確認し、圧縮量や補正量を減らします。コンプレッサーをノイズ除去として使わないようにしましょう。
メーターを動かすためにThresholdを下げ続ける。 必要な効果が得られていれば、それ以上動かす必要はありません。元から音量が整っている素材なら、外す選択もできます。
まとめ:量を決めてから、時間を調整する
最初はRatioとThresholdで抑える量を探し、そのあとAttackとReleaseを一つずつ変えてみます。仕上げに音量をそろえ、伴奏の中で確認。「音が大きくなった」以外の改善を言葉にできれば、次のトラックでも判断しやすくなります。
※機能説明は2026年11月1日に確認したAppleのMac用Logic Pro公式ガイドに基づきます。モデルやバージョンによって使える項目や表示が異なる場合があります。