ボーカルがこもって聞こえる。ギターを足したら、曲全体が急に重たくなった。そんなときに候補になるのがEQです。ただ、カーブを動かしているうちに元の音が分からなくなることもあります。
最初の目標は、きれいなカーブを描くことではなく、「気になった部分が少し改善したか」を判断できるようになること。Mac用Logic ProのChannel EQを例に、一つの帯域から試す手順を紹介します。Logic Pro自体は有料ですが、所有者はこの標準エフェクトのために別のプラグインを購入する必要はありません。
EQは、音の高さごとの音量を調整する道具
EQは、特定の周波数帯を持ち上げたり下げたりして音色を調整します。フェーダーが音全体の大きさを変えるのに対し、EQでは低い成分だけを減らす、といった操作ができます。音程を別の音へ変える機能ではありません。Apple公式:イコライザの概要
ただし、「声が小さい」という悩みなら、先にフェーダーで上げるだけで済むかもしれません。「ほかの楽器と一緒になると埋もれる」なら、伴奏の音量や編曲にも原因の候補があります。何でもEQで直そうとせず、まず困っていることを一文にしてみましょう。
最初に覚える三つのパラメータ
Channel EQでは、まず中央のベル型の帯域を一つ使います。
- Frequency:どの高さの音を中心に調整するか。Hzで表示されます。
- Gain:その帯域をどれくらい増減するか。プラスで強調、マイナスで抑制します。
- Q:影響する幅の調整。ベル型では、値を大きくすると狭い範囲、小さくすると広い範囲を扱います。
低域を下から整理するハイパス、高域を上から整理するローパスもあります。「ハイパス」は高い音を通すフィルターなので、減るのは低い側です。各帯域の操作と右側の全体ゲインは役割が違うため、混同しないようにします。Apple公式:Channel EQのパラメータ
Channel EQには八つの帯域がありますが、全部使う必要はありません。トラックのAudio FXから「EQ」→「Channel EQ」で追加できます。Apple公式:Channel EQの概要
練習例:こもりが気になる声を、一か所だけ調整する
以下の数値は操作を覚えるための未試聴の例です。特定の録音で効果を確認した設定でも、どんな声にも合う正解でもありません。
1.短い区間を繰り返す
声と伴奏が両方鳴る数小節を選びます。EQを入れる前に、何が気になるかを「声の低い響きが伴奏と重なる」などとメモしてください。調整前の状態へ戻せるよう、プロジェクトを保存しておきます。
2.ベル型を一つだけ動かす
ほかの帯域は変えず、例えばFrequencyを300 Hz、Gainを−2 dB、Qを1.0にします。これは出発点です。こもりがこの付近にあるとは限らないので、変化が目的に合うかを聴きます。
少し聞き取りやすくなったか、それとも声の厚みだけが減ったか。後者ならゲインを0 dBへ戻します。「何か変わった」と「良くなった」は分けて判断しましょう。
3.周波数か量の、どちらか一方を変える
変化が分かりにくいときは、減らす量を増やす前に、周波数を少しずつ動かして比較します。一度にQまで動かすと、何が効いたのか追いにくくなります。耳に痛い音を大きく持ち上げて探す必要はありません。再生音量も控えめにします。
4.全体の音量をそろえて比較する
オンとバイパスを切り替え、必要に応じてMaster Gainで全体の大きさを近づけます。音量差が大きいままだと、音色より大きさを選びがちです。厳密な測定でなくても、片方だけ明らかに大きい状態を避ける意味があります。
アナライザーは「答え」ではなく確認用
Channel EQのアナライザーは、周波数成分を見る補助になります。Appleも、フラットな状態から再生し、スペクトルを確認しながら調整する流れを紹介しています。Apple公式:Channel EQの使い方のヒント
ただし、山が見えるたびに削ると、その楽器らしい響きまで失うかもしれません。最初に耳で気になった点があり、その位置の見当をつけるために画面を見る。そんな順番なら、カーブの見た目に引っ張られにくくなります。
やりすぎを見つける聴き方
ソロではすっきりしていても、曲へ戻すと細くなる場合があります。判断は伴奏と一緒に行い、Aメロだけでなくサビも確認してください。低い声の部分で必要な厚みが残っているか、子音だけが目立っていないかを聴きます。
低域を切るフィルターも、全トラックへ同じ値を入れる必要はありません。低音が役割の楽器まで削ると、曲の土台を変えてしまいます。不要と判断できる音がなければ、触らない選択で大丈夫です。
最後は、画面を見ずにオンとオフを比べます。「こもりは減った」「でも声が遠くなった」のように良い点と悪い点を一つずつ書き、悪い点が大きければ量を戻します。変化を説明できないときは、いったん外して先へ進みましょう。
まとめ:一つの悩みに、一つの変更から
EQの練習は「悩みを決める→一帯域を少し動かす→音量をそろえる→曲の中で比較する」の繰り返しです。設定値を覚えるより、何を改善し、何を失ったかを聞き分けることが次の調整につながります。
※機能説明は2026年11月1日に確認したAppleのMac用Logic Pro公式ガイドに基づきます。画面表示はバージョン等で異なる場合があります。
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